佐藤くんは甘くない
「……あ、あった」
ふうあぶねぇあぶねぇ。
珍しくやってきた化学の宿題も忘れるとこだったぜ。
私は満足しながらうんうん、と頷いて筆箱と教科書、ノート、プリントを持って意気揚々と教室を出ようとした、そのとき。
「───結城」
少し、焦ったようなキーの高い声。
私はびっくりして、振り返ると……もう瀬尾と言ったのかと思っていた、佐藤くんがそこには立っていた。
そして、くっと息を止めるように吐き出すようにいきなり、
「今日!」
「え?」
今日?
「今日、帰り、教室で……待ってるから!」
「え……?」
私が聞き返す前に、佐藤くんは私から逃げるように走り去って行ってしまった。
なんだこの言い逃げ感満載の単語を繋げた言葉は。