佐藤くんは甘くない


「……あ、あった」


ふうあぶねぇあぶねぇ。

珍しくやってきた化学の宿題も忘れるとこだったぜ。


私は満足しながらうんうん、と頷いて筆箱と教科書、ノート、プリントを持って意気揚々と教室を出ようとした、そのとき。









「───結城」




少し、焦ったようなキーの高い声。


私はびっくりして、振り返ると……もう瀬尾と言ったのかと思っていた、佐藤くんがそこには立っていた。

そして、くっと息を止めるように吐き出すようにいきなり、


「今日!」

「え?」


今日?


「今日、帰り、教室で……待ってるから!」


「え……?」


私が聞き返す前に、佐藤くんは私から逃げるように走り去って行ってしまった。

なんだこの言い逃げ感満載の単語を繋げた言葉は。


< 17 / 776 >

この作品をシェア

pagetop