佐藤くんは甘くない


瀬尾を、心配させちゃいない。


私は、瀬尾を頼っちゃいけない。雨が嫌いだなんて、怖いだなんてそんなそぶりを、彼の前で見せてはいけない。



すぐ後ろにいたひまりちゃんが、


「んー……あ、じゃああそこに入るのは?」


歩道を渡ってすぐ、小さなテラスがある古めのカフェだった。綺麗に細工された木彫りの看板に綴ってあった。



Kirsche。……キルシェ?


確かに雰囲気もよさそう。私が小さく頷くと、ひまりちゃんは口を綻ばせた。


「じゃ、雨降る前に入るか」


瀬尾が一瞬、私の方を見た後───視線を戻しながらそういう。


「わ、信号変わりそう」


見ると、向こう側にわたるための歩道で信号の青色がちかちかと点滅し始めていた。ひまりちゃんがそういって───一歩、足を踏み出した。


ちか、ちか。


ひまりちゃんが歩道の白線を一歩、また一歩───





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