佐藤くんは甘くない



もう、頭ぐちゃぐちゃだった。


ただひたすらに、佐藤くんの名前を呼び続ける。そして、ぴくり、と一瞬ひまりちゃんを抱きかかえた手の指が動いた。





───動いた。


全身の力が抜ける。

駆け巡ったいろんなものが、零れ落ちるくらいに、私の体の力が抜ける。



けれど、安心したのもつかの間だった。

ゆっくりと、瞼を開く───そして、佐藤くんはあ、と口にした。まるでぽろりと、何か恐ろしい物でも見るように。青ざめていく顔、震えはじめる身体。


「───っっ、」



佐藤くんが、息を飲んだ。


その瞬間、抱き着いたひまりちゃんを振り払うように右手の甲が───




「っっ……!」




勝手に、足が動いた。

引き寄せられたみたいに。




< 201 / 776 >

この作品をシェア

pagetop