佐藤くんは甘くない
もう、頭ぐちゃぐちゃだった。
ただひたすらに、佐藤くんの名前を呼び続ける。そして、ぴくり、と一瞬ひまりちゃんを抱きかかえた手の指が動いた。
───動いた。
全身の力が抜ける。
駆け巡ったいろんなものが、零れ落ちるくらいに、私の体の力が抜ける。
けれど、安心したのもつかの間だった。
ゆっくりと、瞼を開く───そして、佐藤くんはあ、と口にした。まるでぽろりと、何か恐ろしい物でも見るように。青ざめていく顔、震えはじめる身体。
「───っっ、」
佐藤くんが、息を飲んだ。
その瞬間、抱き着いたひまりちゃんを振り払うように右手の甲が───
「っっ……!」
勝手に、足が動いた。
引き寄せられたみたいに。