佐藤くんは甘くない
厳しい視線を後ろから浴びながら、私たちは玄関へ。
靴に履き替えて、立ち上がると、玄関が少しだけ低いからなのか、同じぐらいだった佐藤くんの視線が少しだけ高くなる。
ちょっとだけ変な感じだ。
わざわざ履く必要なんてないのに、佐藤くんはサンダルを履いて、玄関の引き戸を開ける私の後ろについてくる。……いやいや、どこまでついてくる気だ佐藤くん。
ちょこちょこと、跳ねた髪を揺らしながら、とうとう門扉の前までついてきた。ひよこじゃああるまいに。
さすがに、私は開けた門扉から振り返って、まだついて来ようとする佐藤くんに、
「ここまでで大丈夫ですから」
「……」
「あー、今から瀬尾呼びますんで、佐藤くんはどうぞ家の中に入ってくださいッす」
ポケットからスマホを取り出して、私はくいくいっとそれを指さす。
が、佐藤くんはどうやら瀬尾が来るまでは動く気が無いらしい。ふいっと向こうを向いてしまった。
そして、何かうわごとのように、
「……見えない」
と呟いた。
私も、佐藤くんと同じように空を見上げる。
もう、6月。
真っ暗で分厚い雲に覆われた月が、ぼんやりと穴が開いてしまったように明るい。