佐藤くんは甘くない
「……那月くん、風邪を引いてしまったのだと、克彦さんから聞いたから……お見舞いに、と思って」
「……」
おずおずと、頼りない細い腕が大きな袋包みと、藍色がかった少し小ぶりな桔梗の花束を差し出す。
佐藤くんは、一瞬、それを見て寂しそうに目を伏せる。けれど、ぐっと唇を噛みしめて、奪い取るかのようにそれを受け取った。
そうすると、その女の人は優しげに微笑むのだった。
けれど、それを遮るほど、
「はは……」
佐藤くんの乾いた笑い声が、暗闇に溶け込んでいく。私も、その女性も佐藤くんの行動に体が動かなかった。
それくらいに、痛々しい笑い声だったから。
女の人が、不安そうに、
「……那月くん……?」
「いえ、知らないんだなって思っただけです。父から何も聞いていないんですか」
追い詰めるような、そんな口調。
そのはずなのに、私には佐藤くんが自分の首をゆっくりと締めつづけているような気がした。
誰よりも辛辣で棘のある言葉を吐いているのにそれは、自分の心を抉るようで。
「俺───、花が嫌いなんですよ」