佐藤くんは甘くない


……違う。

佐藤くんは、平気なんかじゃない。


寂しくて、苦しくて、そして誰よりも誰かの言葉を、恐れてる。



自分がいつか、母親のように見放される時が来るんじゃないかって───ずっと、びくびく怯えながら。



それが、平気なわけじゃない。でも、耐えるしか、それしか方法がなかった。佐藤くんには、それしかなかったから、悔しくても苦しくても涙が出そうになっても、耐えるしかなかった。


初めて、逢った時。

そして、佐藤くんの───抱えている問題を、知った時。佐藤くんは、震えていた。


少し触れただけなのに、まるで目の前に悪魔でも現れたみたいに。いや、そうだ。佐藤くんからしたら、本当の母親と私は同じに見えたに違いないのだから。悪魔も同然だった。


「だから、」


私は、拳に力をいれた。


どこかで踏ん張らないと、私は声が震えてしまいそうだった。



「だから、今日だって、辛くても無理に笑おうとするんですか」




私は気づいていた。

朝、佐藤くんに話しかけられた時から。佐藤くんが、無理して笑っていることに。



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