佐藤くんは甘くない
お母さんが言った意味はよくわからなかった。
けれど、悲しいとき、辛いとき隣にいてくれたら心が温かくなるのは、少しだけ分かった。
だから、熱で辛そうにする妹の手を握っては、大丈夫だよ、お兄ちゃんがついてるからね、きっと平気だからねと声を掛け続けた。
妹は、僕の言葉を聞くと、安心したように笑みを浮かべて眠ってしまう。
その笑みを見て、僕はとても温かな気持ちになるのだった。
妹は、絵が得意だった。
ベットの上で遊べるものと言えば、白いキャンバスにクレヨンで絵を描くだけ。それだけで楽しいのかと聞くと、お兄ちゃんが隣にいるからとっても楽しいと笑う。
変な奴だなあと言うと、いつかもっとうまくなったらお兄ちゃんにあげるね、と言ってくれた。
少しだけ照れくさかったけれど、柚月にお兄ちゃんと呼ばれるのが好きだった。
あの時間が止まったかのような柚月の部屋で、こんな幸せがずっと続けばいいと、そう思っていた。
───けれど、それは長くは続かなかった。
その時間を壊したのは、他でもない僕自身だった。