佐藤くんは甘くない
柚月は何度も謝った。
熱のせいで、頭も虚ろだったろう、息だって上がって苦しかっただろう。なのに、何度も、何度も、何度も僕に謝り続けた。
その声が、とうとう掠れてきて聞こえなくなってきたとき。
どうして、なんだろう。
僕の中で、何かがぱん、と弾けたような気がした。
今までずっと、我慢してきた。
ずっと、ずっと、柚月のために、お兄ちゃんだからお兄ちゃんだから、僕はお兄ちゃんだからって言い聞かせて、我慢してきた。
友達と遊びたいのを我慢して、苦しむ柚月の手を握ってあげたのに。
お兄ちゃんだから、柚月の体調ばかり気にして学校の話も聞いてくれない両親に何も言わなかったのに。
我慢してきたのに。ずっとずっと我慢してきたのに。
なのに、どうして。
柚月のせいだ。
柚月が悪いんだ。
柚月が熱を出したりするから。
柚月が弱いから。
柚月がいつまでも寝たままだから。
全部、全部、全部、柚月が悪いんだ。
嫌い、柚月なんて大嫌い。