佐藤くんは甘くない
はっと我に返った。
自分の言ったことを、理解するまでに時間がかかった。
ただ分かったのは、酷く泣きじゃくる柚月の顔だけ。
そこから、何をしたのかほとんど覚えていない。柚月の部屋を出て、廊下に出て、踵もはめないで靴を履いて、家を飛び出した。
走って、走って、走って、やみくもに走った。
ついに息が切れて、立ち止まると、冷静になった。真っ先に浮かんだのは、涙をこぼす柚月の顔。そして、焦ったように家を出て行くお母さんの後ろ姿。
……帰らないと。
帰って、謝らないと。
ごめんなさいって、言わなきゃ。
向きを変えて、僕はとぼとぼ家に向かい始めた。
そして、家についたとき。
自分は、取り返しのつかない過ちを犯してしまったのだと、思った。