佐藤くんは甘くない
この手を離してしまえば、きっと、もう二度と逢えなくなる。
僕には逢ってくれなくなる。
もう、あの頃の優しい時間は迎えられない。
あるのは、この冷たい小さな体と、壊れかけた心だけ。
そんな自分を───誰が、愛してくれるというのだろう。
まわしていた腕が離れていく、掴みたくても、掴めない。僕が殺したのに、僕がお母さんとお父さんをめちゃくちゃにしたのに、それなのにどうやって引き留められるというんだろう。
お母さんは、そっと大きな掌で僕の頬を包み込むと、掠れた声でつぶやくのだ。
───ごめんね、弱いお母さんで、ごめんね。
その年の誕生日も、次の年の誕生日も、その次の誕生日も、僕の隣にお母さんの姿は、なかった。
そして、僕は仕事の都合で父親とその家を引き払ったのだった。