佐藤くんは甘くない


きっと、この事実を知れば、誰もが自分を嫌いになるだろう。


嫌われたくない。

もう、誰にも嫌われたくない。


ひとりぼっちになりたくない。

もう、誰かの手を離してしまうのは嫌だ。



だから、怖くなった。


お母さんと同じように、自分を置いて行ってしまうような恐怖にかられて、女の人に触れる事さえ、近くにいる事さえ、怖くなった。


それが、女嫌いになった理由だった。




……手紙は、毎年誕生日が近くなると、送られてくる。

名前のない、宛名もない、僕の住所だけが書かれた手紙。



その中には、幼いころよく見た母の繊細な丁寧な字で僕への祝いのメッセージが書かれていた。


『あれから随分と立って、もっと身長が伸びているのかな

 たぶん、貴方は忘れたいと思うでしょう、私のことを 

 在り来たりな言葉だけしか言えないけれど、ごめんなさい

 静かに泣くあなたに何もしてあげられなくて

 今、何をしてるんだろう。たとえ目に見えなくても、聞こえなくても。貴方が、幸せであることを願ってる』







 
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