佐藤くんは甘くない
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佐藤くんから、すべての話を聞いた私はただ、震える彼の背中を優しく撫でてあげる事しかできなかった。
佐藤くんが女嫌いになった理由。
そして、妹である柚月ちゃんの話。
それをきっかけにばらばらになってしまった家族。
そのすべてを、私が佐藤くんから話を聞くだけで解決できるほど、私は大人ではなかった。……ただ、それでも私は佐藤くんの肩を優しく撫でてやり続けた。
佐藤くんが泣きやむと、いつの間にか降り続いていた雨も上がっていた。厚い雲に覆われていた空が、真っ白な紙に滲んでいくように紅色に染まっていく。
帰り支度の時も、ほとんど無言だった佐藤くんが、ちょうど坂道の上で、上の空のように呟いた。
「……きっと、お母さんも、柚月も俺のこと憎んでる」
「……」
「今更謝って、どうにもならないって分かってる」
「……」
「だけど、謝りたい。一度だけでいいから、許されないって分かってるけど、それでもやっぱり、謝りたい」