佐藤くんは甘くない
佐藤くんの誕生日は28日。
佐藤くんの母親に会えるとしたら、その時だけなのだ。
けれど、時間の指定がされているわけでもない。いつ来るかのか分からない、もしかしたら来ないかもしれない。だから、その前に佐藤くんの住んでいた昔の家に行く必要があった。
私は、なるべく目立たないように、背中を丸めて、小さく縮こまって顔を伏せたとき。
「お待たせ」
落ち着いた声と、私の頬に冷たい感触。
振り向くと、ジュースの缶を手に持った佐藤くんが、私を見上げている。
「おはようございます」
「はよ。……これ、やる」
「……あ、ありがとうございます」
差し出されたオレンジジュースを受け取って、凝視すると、佐藤くんはプルタブを開けて苦そうなブラックコーヒーを一気飲み。
遠慮がちになる手で、プルタブを開けて私も同じように一口。
ひんやりとした冷たい甘酸っぱさが舌を撫でる。そのとき、私は ようやく緊張で口が渇いていたのだと気づいた。