佐藤くんは甘くない



佐藤くんの誕生日は28日。


佐藤くんの母親に会えるとしたら、その時だけなのだ。


けれど、時間の指定がされているわけでもない。いつ来るかのか分からない、もしかしたら来ないかもしれない。だから、その前に佐藤くんの住んでいた昔の家に行く必要があった。



私は、なるべく目立たないように、背中を丸めて、小さく縮こまって顔を伏せたとき。





「お待たせ」



落ち着いた声と、私の頬に冷たい感触。

振り向くと、ジュースの缶を手に持った佐藤くんが、私を見上げている。



「おはようございます」

「はよ。……これ、やる」

「……あ、ありがとうございます」


差し出されたオレンジジュースを受け取って、凝視すると、佐藤くんはプルタブを開けて苦そうなブラックコーヒーを一気飲み。


遠慮がちになる手で、プルタブを開けて私も同じように一口。


ひんやりとした冷たい甘酸っぱさが舌を撫でる。そのとき、私は ようやく緊張で口が渇いていたのだと気づいた。



< 301 / 776 >

この作品をシェア

pagetop