佐藤くんは甘くない
私がここまで緊張してるなら、きっと佐藤くんは何倍も何十倍も緊張してる。
……私が、佐藤くんを引っ張らなきゃ。
手に持った缶をぎゅっと握りしめて、力の入った肩からゆっくり力を抜く。
「じゃあ、行きましょうか」
「…………うん」
佐藤くんと、目が合う。
何も言わずに、穏やかに微笑んだ。けれど、その瞳に不安と期待と、過去と現在すべての思いが混じりあって、私にはどうしても素直に笑い返すことができなかった。
無人の改札を通って、ちょうど来た電車に乗る。
当然のことながら、都内に近いとはいえ、そこまで乗車している人はいなかった。
ぷしゅーと、静かな朝に電車のドアが閉まる音が響き渡る。
私たちは、入り口のすぐ近くの席に腰を下ろした。
がたん、と動き始めた景色にしばらく放心していたけれど、
「……結城」
「はい?」
隣に座っていた佐藤くんを見ると、何やらごそごそ取り出している様子だった。そして、それを手に取ると佐藤くんは、私に差し出す。
「───これ、見たいって言ってた……手紙」
真っ白な便箋。
それが数枚、佐藤くんの手のひらにあった。