佐藤くんは甘くない


取り敢えず、すべての便箋を見る。全部同じように、佐藤くんの住所だけが記され、紫陽花の切手が隅に貼られていた。


「これは全部で何枚ですか?」


「結城にもらったのを合わせると、11枚」


11枚。


佐藤くんの誕生日に合わせて送られてきたのだと考えると、17歳から逆算して───つまり、7歳の誕生日からこの手紙が送られてきたことになる。



7歳。

その単語に、私は聞き覚えがあった。


佐藤くんは何か遠くの思い出をたどる様に、目を細めながら、


「……お母さんが出て行ったその年から、ずっと送られてる」


「でも、佐藤くんは元の家から、今の家に引越ししたんですよね?じゃあなんで、手紙が佐藤くんのもとに届くんっすかね」


「たぶん、お父さんが教えたのかも。それとも、じいちゃんが。どちらにしろ、家の住所を知るツールはいくつかあったと思う」


「……なるほど」


そこまでして、家を出たはずの、置いてきたはずのわが子を思いやる気持ちがあったのに。どうして、どうして佐藤くんのお母さんは佐藤くんを置いて行ったのだろう。


……筋違いだ。


私は、佐藤くんの悲しみをすべて知っているわけじゃない。


だから、佐藤くんのお母さんに対して、何か感情を抱くのは。……筋違い、なんだ。



ぎゅうと、握りしめていた手の力を抜く。


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