佐藤くんは甘くない


思わず目を閉じる私。


佐藤くんはどうにか、怒りを収めてくれたらしい。振り上げた腕をゆっくりと下げた。


そうして、大きくため息をつくと、


「ほら、あの夜……来た、人」

「……あの夜?」


どの夜だ。

口に出しそうになって、私は寸でで押さえる。


佐藤くんのお見舞いに来た、女の人。佐藤薫、佐藤くんの父親の再婚相手であり、義理の母親にあたるあの人。


「あの人、花屋をやってるから」

「ああ……、だから花束」


納得した。

確かに仕事にしているのなら、花束を持っていくのは普通だ。


でも、それじゃあ。

あんまりに、佐藤くんとの相性の悪さが窺えてしまう。


「父さんと再婚してから、家ん中は花だらけだし、くしゃみ止まんないし……あの人は、それに気づいてさえ、くれなかった」


「……」


「どんなに仲良くしたいって、上辺で思ってても、そういうのは隠し通せないんだ。……だから、あの家には帰りたくなかった」



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