佐藤くんは甘くない
「でも、嫌だったんだ」
ぎゅっと、重ねられた手に力がこもる。
「……ちゃんとわかってる、俺が結城を怒らせたから、だから結城があんなこと言ったんだって。理解してるけど、頭ではわかってるけど全然……っ、納得できないんだ」
「さとう、く、」
「嫌だよ……っ」
吐き捨てるように、佐藤くんはそういった。
触れたほうの肩だけが熱くて、めまいがする。逃げたいのに、体が言うことを聞いてくれない。佐藤くんがいう言葉ひとつひとつが、毒のように全身に回って、私を捕えて離さない。
「結城が、俺のことを女みたいな手間のかかる同級生とか、ほっとけない弟みたいな友達とか、そう思ってることが、耐えられない。
だから、あの時、結城にああやって言われて、自分でもわけわかんなくなるくらいかっとなって、結城にひどいこと、言った。……ごめん。
……でも、教えて。結城は、俺のことどう思って、る?」
「ぁ、」
そんな質問、今の私にしないで。
答えられもしない質問を、私にしないで。
黙ったままの私から否定を受け取った佐藤くんは、何度か言葉を詰まらせて、ようやく口にした言葉は、
「俺は、結城に男だってわかっててほしい、から……だから、ごめん、頭の中ぐちゃぐちゃで何が言いたいかよくわからない。
………………あの、ね。
ひとつだけ、約束して。
お願いだから、ああいうこと言わないで」
普段の佐藤くんからは想像もできないくらい、切羽の詰まった声だった。
表情も読み取れないけれど、重ねられた手のひらの握る強さと、その声で私が佐藤くんを酷く傷つけてしまったのだと、分かった。