17歳の遺書
『どうしたんだよ。』
と半ば呆れた声で聞くと、






『はい。』
となぜかゼッケンを渡される。




『ん?なに?悠希に渡して来いっていうこと?』




『違うから、もう悠希は走るし、』


とさっきの仕返しというような呆れた顔で、美帆がいう。



『え?俺わっかんないんだけど、』





『だからー、これ着て、バトン受け取って、歩くの。』



えぇぇぇーーーー!!
はぃ??意味がわからない。




『え?俺。走れないし、』





『だかーらー、歩くの!ほらもう順番きちゃうから。』





俺は戸惑いながらも、ゼッケンを着てレースラインに立つ。






そこから見る景色は初めての景色で、
どきんっと胸が高鳴る。



初めての光景に、初めての感触に、
涙が溢れそうになる。


時間が全部止まったようにも見えて。






クラスメイトは俺を見てみんなニコニコしてる。




みんなの笑顔を見て、また嬉しくなって
涙がこぼれる。





シュッと風を切り走ってきた悠希からバトンを受け取る。




涙でぼやけてわからない悠希の顔を見る。


『よし、優太。いってこい。俺らがつないだバトンもってちゃんとゴールしろよ。歩いてでいーんだから。』


だめだ。みんながつないできたものなのに。




一番なのに、こんなことできないと
バトンを返そうとすると、それは、拒まれて、俺の手にしっかりとバトンを握らされる。



俺の目からはとめどない涙が流れてきて、早くスタートしなきゃと思ってスタートする。


あれだけあった差もどんどん縮まり、ついには抜かされていく。




それでも、みんなは応援してくれて、
俺は歩き続けた。

『ゆーうーっっ!』
と美帆が後ろから飛びついてくる。


『びっくりしたでしょっ!みんなで考えたんだよ。
ほら、ゆうは全然一人じゃないんだよ、、、みんながいるんだよ、ちゃんと考えてくれる仲間がいるんだよ。
うっ....うっ...、ゆうの居場所はここにも、美帆の隣にもちゃんとあるから....』




美帆は俺の手を握って泣きながら笑ってた。あとから南さんも、祐希も来てくれて、四人でゴールした。




俺たちに送られているのかは分からないけれど、みんなに送られた会場いっぱいの拍手の波は俺をまた、嬉しさの波に飲み込んでいった。






結果は最下位。
なのにみんな俺がゴールした瞬間にこっちに走ってきてくれて、たくさん言葉をかけてくれた。





あの輝きの中に入ってこれたかな?
俺は今輝いてるかな?
みんなの優しさに包み込まれて、
もみくちゃにされて、うれしくて、嬉しくて涙が止まらなかった。






『...みんな....ごめん。俺のせいで.....最下位。
みんなに迷惑かけたのに....俺っっ嬉しくて....嬉しくて、、みんな本当に....本当にありがとう。』




俺は途切れ途切れの言葉をつないでみんなに感謝の気持ちを伝えた。




みんなは俺をまた見て、泣いたり笑ったり、美帆はぎゅっと俺を抱きしめてくれて、俺の涙はずっと止まらなかった。




苦労して、先生に許可とったり、黄団のみんなに許可とったり、いろいろしてくれたんだと思うとまた涙が溢れ出してくる。




ありがとう。みんな。本当にありがとう。声に出したその言葉を聞いたみんなはとびきりの笑顔で笑ってくれた。




俺のこの言葉が心に残りますように。
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