方言男子に恋をした
誰かしら。

そう思い振り返ると、そこにはいないはずの人物が立っていた。


「…佐久間課長?」


何を急いできたのだろうと思うくらい、佐久間の息は上がっていた。

今野常務に呼ばれたとか?
いや、でも私のいるここに呼び出すのは普通に考えておかしい。


「あ、佐久間課長」


今野常務はというと満足そうな顔で手をひらひらと振る。
逆に佐久間の顔には、すっと眉間にしわがよった。

ってこわいわよ!
何で怒っているか知らないけど、上司の前でその顔はダメでしょう⁉


「出直してもよろしいですか?」


佐久間が次に浮かべたのは綺麗な微笑み…プラス真っ黒な何か。
自分に向けられたわけでもないのに寒気がした。


「うん、そうだね…でもいいの?去っちゃっても」

「今野常務のおっしゃることがよく分かりません」


そう言って佐久間はもう一度綺麗に微笑んで去っていった。

こわっ…。

去っていく佐久間の背中を見つめながらそう思った。


「本当おもしろいねあの男は」


前を向けば、今野常務は先ほどと同じような笑みを浮かべている。
何か面白いものを見つけたような。


「あの…どういうことか説明してもらえるとありがたいのですが」

「さっき清水さんからこんな連絡をもらってね」


そう言って見せられたのは社員用の携帯で、確かに送り主が清水さんのメール。
どれどれと内容を見てみると、どうやら佐久間から今野常務に渡すものがあると言われたがどうするかといった感じだった。


「これに俺は自分で連絡するって返事して、佐久間課長にこう送ったわけ」
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