大好きな君へ。
 「実は、この頃兄貴の様子がおかしいんだ。何かに怯えているようなんだ。だから今日、甥の通っている保育園で兄貴には内緒で付き添い体験に参加していたんだ。離婚したんだけど、お母さんが仕事で忙しくてね」


(えっ、もしかしたらあの保育士のいた保育園の団体……。ああ、だから彼処に居たのか)

僕は何気にそう思っていた。

孔明の兄貴の離婚したことより、そっちを気にしていたんだ。


(もしかしたら……、あの保育士と知り合いなのかも知れないな)

でもそんなことは聞けるはずもなく、僕は孔明の背中を追い掛けた。


「遅いぞ」


「ごめん、考え事をしていたんだ」


「何をだ? 又厭らしいことか?」


「止めてくれ。孔明とは違うんだよ」

僕はその時、高校時代に孔明から借りたままになっているエロ本を思い出していた。


(そうだ。今日持って帰ってもらおう)

何気にそう思った。




 そんな話をしているうちにスーパーの宝くじ売り場にいた。


「お前の叔父さん此処で当たったんだよね。俺もあやかろう」
孔明はそう言いながらドリームジャンボを買った。


「隼はどうする?」


「あ、辞めておくよ」

僕はあまりお金を持っていなかったんだ。
肉と野菜と焼き肉タレ。
それだけでいっぱいいっぱいだった……




 「最上階はもっと凄いんだろうな?」

そう言いながら景色を満喫した孔明。


僕はさっき買った物を袋から取り出しテーブルの上に並べていた。

モヤシにキャベツ等が盛り込まれた野菜パック。

それらをまずホットプレートに並べて、二人だけの焼き肉パーティーは始まった。




 その時携帯に電話が掛かってきた。
二つ折りのカバーを開けて表示を確認する。
其処には『真二叔父さん』とあった。


「もしもし」


『もしもし。あっ、隼か? 俺だ』


「あっ叔父さん? え、又アメリカに行くの? うん、解った。それにしても良く資金が続くね……」


『まあな。当たったのがジャンボだったから何とかなっているよ。今の賞金だったら良かったけどな。今のミニってヤツより少なかったよ』


「そうだよね。今ならあの頃の十倍以上もあるからね」

噂をすれば何とかだ。
でも、この頃良くアメリカに行く。
もっとも、僕の両親は今ニューヨークに居る。
だからだと思うけど……

だって叔父さんは、父の弟なんだから。




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