大好きな君へ。
 一通り話してから切ったら、孔明が見ていた。


「あれこの待ち受け、結夏だよね。へー、付き合っていたんだ」


(ヤバい……)

孔明の指摘した通り、彼女は結夏って言うんだ。


僕は朝、孔明のことを親友だと言った。

でも孔明をこの家に招待したこともなければ、彼女のことを話してもいなかったんだ。
いや寧ろ、親友だから話せなかったんだ。


「うん。恋人だったんだ。でも会いたくても逢えないんだよ」
僕は覚悟を決めて、やっと口を開いた。


「そりゃ会えないだろう。結夏はもうじき三回忌だからね。」


「えっ、今何て言った?」


「だから、結夏が三回忌だって……えっ、えっー、知らなかったんか?」


「三回忌ってことは死んだってことか?」


「もしかしたら、結夏のお腹にいた子供の父親はお前か?」


「えっ!? 結夏に子供が……」


「そうだよ。子宮外妊娠だったんだってよ。結夏、誰にも話していなかったんだってさ。卵菅破裂ってやつで、大量に出血してのたうち回ったらしい。両親が気付いた時は、血の海だったらしいよ」


「そんな……」


「お前、結夏の親に謝らないといけないな。あれっ!? 結夏は確かストーカー被害に合っていたんだ。だから、ソイツが父親だろうって俺は思っていたんだよ。まさかお前だったとは……」


「ストーカー!?」

僕は思い出していた。
結夏と久し振りに会った日のことを……




 「僕は駅前の銀行の前で結夏に会ったんだ。物凄く慌てていたみたいだったけど、懐かしくて声を掛けたんだ」


「きっとストーカーに付けられていたんだな」


「かも知れないな。そしたら、結夏が突然僕にしがみ付いてきたんだ」

僕は、あの日の出来事を思い出すようち孔明に話出していた。


「訳の解らない僕は、彼女に押しきられた格好になってこの部屋に招き入れてしまったよ。随分積極的になったって感じたけど、そう言うことか」


「結夏はお前のことが大好きだったからな。地獄に仏。いや、それ以上だったのかも知れないな」


「結夏は僕には何も言わなかった。ただ笑っていたんだ」


「あははははってか?」

孔明の指摘に頷いた。


「結夏はきっと、笑うことで恐怖を抑え込んだんだと思うよ」


「でもまさか亡くなっていたなんて……」
僕はそう言いながらあのカーテンを見つめた。



< 12 / 194 >

この作品をシェア

pagetop