大好きな君へ。
 僕に会いに結夏のストーカーが訪ねてきた。
驚いたことにソイツの陰に隠れて孔明もいたんだ。
孔明は確かに僕の親友だ。でも今は一番会いたくない存在だったのだ。


(よくもまあいけシャアシャアと)

僕は自分の心をコントロール出来ずに孔明を睨み付けていた。




 気まずい雰囲気だった。
でも追い返す訳にも行かないから取り合えず中に入ってもらった。
孔明はそれを承知で来たのかも知れない。


(お前の魂胆は解っている。僕が隠れるように暮らしているから、争わないと思っているんだろ)

孔明は僕が大女優の息子だとからかって遊んでいる。そのことで僕がどんなに傷付くかなんて考えもしないで……
孔明は慰めているつもりなのかも知れないけど、それが負担だったんだ。




 「僕は帰宅時、結夏さんを会社近くで見つけて後を付けてしまいました。まさか一緒の駅で降りるなんて夢にも思いませんでした。だからずっと一緒に帰れたらなんて思い、結夏さんが退社する時間を待つようになったのです」
先に言い出したのはストーカーだった。


「どの位の間?」


「一年位かな? 僕の会社残業がほとんど無いんです。だからつい……」


「待ち伏せか?」

僕の質問に頷いたストーカー。
それほど悪いヤツには見えなかった。


好きになった人を追い掛けてみたら同じ駅を利用していた。
ただそれだけだったようだ。




 「兄貴は万引き犯のレッテルを貼られて苦しんでいたんだ」
遂に孔明も話し出した。


「レッテルって、もしかしたら万引きをしていないってことか!?」

孔明は悔しそうに、唇を噛み締めた。


「コンビニ側が目を着けていた中学生の不良グループがいたんだ。偶々捕まった時に兄貴が傍に居た。それだけだった。僕はその時トイレに行っていて、出てきたら兄貴が捕まっていたんだ」


「それが何故、ソイツ等のリーダーってことになるんだ?」


「知っていたのか?」

孔明の問いに頷いた。


「流石に不良グループって言われいるだけのことはあるよ。ソイツ等は兄貴の持っていた袋の中に商品を入れていたんだ。そしてソイツ等は兄貴をリーダーだって言ったんだ」


「それが結夏にどう結び付くんだ!?」

僕は思わず声を荒げていた。


「結夏に嫌われたと思ったらしい。実は兄貴も結夏を好きだったらしいんだ。だから耐えられなくなったようだ」




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