大好きな君へ。
 「僕は確かに結夏を愛してた。でも、今君にときめいている。僕が本当に好きなのは君なんだよ優香」


「嘘」
私には言い訳にしか聞えなかったのだ。


「嘘じゃない。優香、五月に子供達と体験学習へ行かなかった? あの時松田孔明もいただろう?」


「はい確かにいましたが、松田孔明さんは用事があるって言って……」


「その用事が僕だったんだよ。孔明は僕のバイクを大学まで押してくれたんだ。僕が君にときめいてバイクを倒してしまって、エンジンが掛からなくなってしまったから……」


「嘘……。確かにクラクションが鳴った後、バイクが倒れていたけど……」

私はその時ハッとした。
やはり孔明さんの言ったしゅんは相澤隼さんのことだったんだ。
うっかりしていたけど、怪我じゃなくて本当に良かった。


でもまさか原因が私だったとは……
私は何だかホンワカしていた。


「それが僕だよ。でも、その日。孔明から結夏が子宮外妊娠で亡くなったことを知らされたんだ」


「子宮外妊娠!?」

何故そんなことを言ったのか解らない。
でもその途端に現実に戻された。


私は結夏さんが子宮外妊娠だったってこと知っていたんだ。
でも、私が知っていた事実を隼には知られたくなかったのだ。


「そう、だから孔明とこの兄貴のせいじゃないんだ。子宮外妊娠で胎児は育たないんだって、いずれは流れる運命だったんだよ」


「そんな……」




 「優香……君にどんなに嫌われたとしても……僕は君が好きだ。この思いは変えようがないんだ。僕は……それでも君が好きだ」


「そんな……。私が隼を嫌いになるわけないでしょう。だって隼は私の王子様なんだから。子供の時から大好きだった……私の大切な人だったんだから」

私は遂に隼の前で告白した。

隼は私の手を取り、結夏さんの墓石の前で手を合わせた。


「結夏聞いてくれ。僕は此処にいる中野優香さんを好きになった。結婚したいと思っている。だから早く就職先を決めたかったんだ。でも決して君を忘れた訳ではない。君との間に設けた子供のことも忘れた訳ではない。これからも君との思い出は大切にする。だから、僕の恋を見守ってくれないか?」

隼は結夏さんの墓石に向かってただひたすら祈り続けていた。


「優香、僕は君を愛してる。出来れば君に愛されたいと思っていたんだ。優香、これからもずっと傍にいてくれないか?」

私は隼の言葉に頷いた。嬉し涙を溢しながら……

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