王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
普段は国の王太子とは思えないような言葉遣いだし、何を考えているのかわからないときもあるし、ときどき強引だけど、彼は大切なものを大切にする方法を、ちゃんと知っている人なのだ。
キットは、エリナにないものをもっている。
エリナが彼に惹かれてしまうのは仕方のないことで、もしできることなら、自分も彼と同じように誰かを大切にできる人になりたいと思う。
たとえ住む世界が違っても、二度と会えないことになっても、彼が死んでしまうなんてことは考えられない。
今なら、あのとき弥生が言っていたことがよくわかる。
『ほんとに女はそんなことで男を好きになったりするかね? 恋ってのは理屈じゃないんだよ。惹かれる理由なんて、言葉で説明できる方が怪しい』
惹かれる理由なんて説明できない。
それでも、こんなに惹かれるのは彼だけ。
溢れかえりそうな想いをひとつだってこぼさないように、エリナはキットに抱き付く腕にぎゅうっと力を込めた。
(くっ……なんだよ、ツンデレかよ!)
エリナにぎゅうぎゅうと抱きつかれて、キットはほとほと悶絶しそうだった。
キットはキットで、今朝ベッドでの戯れの末にエリナに"変態"と言われ、半ば本気で困っているように見えたのが、実のところ随分と堪えていたのだ。