王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
「お願いキット、はやく……!」
口元に果実を押し付けてくるエリナの手には、痛々しい包帯が巻かれている。
あんな無茶をするからだ。
結局戸棚の中にあったらしいラズベリーは焼けてしまったのだろうし、これが唯一完成した禁断の青い果実だ。
これをキットに食べさせてしまえば、エリナはあと13年は小説の中に閉じ込められたままだというのに。
それでもエリナは泣きながら懇願している。
空色の瞳に涙をいっぱいにため、キットの唇に果実を押し付けて、なんとか口を開けさせようとする。
そのアーモンド型のきれいな瞳は、元の世界に戻ったら、どんな色で自分を映すだろうか。
『私にもあなたのこと、大事にさせて。愛してるから』
エリナのその言葉を思い出せば、嬉しいやら照れくさいやら先を越されて悔しいやらで、結局怒ったような顔になってしまった。
「お前まさか、ここに残ろうとか思ってんじゃねーだろうな」
「え……?」
今でもキットのことを小説の中の王子様だと思っているエリナには意味が通じず、果実を持った手からふと力が抜ける。
キットはその手を掴んで自分の口元へ引き寄せ、反対の手でエリナの身体を抱き寄せた。