王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~

「キット、これ」


エリナが祈るように握りしめていた小瓶の蓋を開けると、濃厚で甘酸っぱい不思議な香りが漂ってくる。

一週間前、弥生の部屋で嗅いだのと同じ香りだ。


(ああ、そうか)


13時間が経過し、禁断の青い果実が完成したのだ。


よく見回してみれば、部屋は別館のうちのどこか一室であろうが、薄く朝日が差し込んでいる。

まだ完全には日も昇っていないのだろうが、もう8日目の朝がすぐそこまで迫っているのだ。

身体が思うように動かないのは、そのせいなのかもしれない。


「これ、もう完成してると思うから」


エリナがキットの上半身を起こすのを、ウィルフレッドが手伝う。

そして小瓶から空色に色付いた果実を取り出し、キットの口元へ運ぶ。


「今はまだ苦しいかもしれないけど、はやく食べて。急がないと、また……」


またキットが、眠りに落ちてしまう気がする。

そして今度は、そのまま永遠に目を覚まさない。


キットは涙で揺れるエリナの瞳に見つめられ、色付いた禁断の青い果実と同じ色をしていると思った。
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