王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
渡された荷物を片付け、料理を並べてから寝室を覗くと、ちょうど部屋着に着替えた稀斗がドアへ向かってくるところだった。
「いつもありがと」
すれ違いざま、瑛莉菜の柔らかな黒髪に指を絡め、おでこに小さなキスをする。
この数ヶ月でわかった稀斗に関する事柄はもうひとつあって、それは彼が実はキス魔だってことだ。
「あの7日間は、全然手を出してこなかったくせに」
夜のバルコニーでふたりきりになろうが、瑛莉菜から彼に抱きつこうが、ふしだらなことは決してしなかった。
そんな気配は、微塵も感じさせなかったのに。
今の彼からは想像も付かないことだと思うと、あのときの稀斗はもしかしたら、相当我慢をしてくれていたのではないかと、自惚れたくなる。
「うまそー! 瑛莉菜、腹減った」
先にテーブルに付いた稀斗が、あたたかな黒色の瞳をキラキラさせてこちらを見上げる。
まるで子どものように急かしてくる恋人に、瑛莉菜はどこまでも幸せそうな、小さな微笑みを浮かべた。