王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
しかしウィルフレッドは、伯爵が娘の訪問を禁止する本当の理由も理解しているつもりなので、そこは何とも言えないところだ。
「それはね、ウェンディ。ちゃんと結婚できるまでは、お義父上の言い付けに従ったほうが賢明だな」
「え?」
聞き分けのない子どもを諭すように言われて、ウェンディは不安気に眉を下げる。
ウェンディから会いに行っては、迷惑だということだろうか。
公爵領の人々に噂を立てられては、外聞上、結婚しないわけにはいかなくなる。
何やら王太子に気に入られていたあの黒髪の美しい侍女を含め、公爵家に勤める人々も皆、ふたりは結婚するものだと思うだろう。
逃げ道がなくなっては、さすがのウィルフレッドも困ってしまう……?
ウェンディという女の子は、ウィルフレッドのひとことで、素直に笑ったり不安そうな顔をしたり、計算のない純真さで彼を虜にして離さない。
ウィルフレッドには、自分を見上げて揺れる翡翠色の瞳に浮かんだ懸念が手に取るようにわかり、そのすべてを否定するために優しく首を振った。
そしてウェンディの小振りな耳元に唇を寄せ、彼女にだけ聞こえるよう、密やかな甘い声で囁く。
「ウェンディがあんまりかわいいから。ふたりきりになると、きみをめちゃくちゃにしてしまいたくなるんだよ」