王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
ウィルフレッドの代わりに泣きそうになったり、怒ってみせたり……。
彼は腕の中に抱いたウェンディを見下ろして口元を綻ばせた。
(伯爵が聞いたら泣くだろうなぁ)
コールリッジ伯爵が、娘を相当溺愛しているのはわかっているつもりだったが、実際に会ってみると予想以上だったのだ。
そんな彼が、ウェンディをウィルフレッドの妻にするための話し合いに参加してくれているのだから、堪えきれない想いをぶつけられることくらい何でもない。
むしろ、『ウェンディを嫁にもらうならこの自分より大切に愛してみせろ』と叱咤されている気分で、その度に彼女が自分を選んでくれたことを幸せに思うのだ。
「お父さまってば、どうして私がウィルフレッドさまのお屋敷へ行くことは許してくれないのかしら。私はウィルフレッドさまとしか結婚する気はないのだから、何も恥ずかしいことではないのに……」
ウィルフレッドの腕に囲われながら、ウェンディはぶーぶーとかわいらしい唇を尖らせる。
何も頻繁に泊り込みで訪問したいと言っているわけではないのだ。
いずれ結婚するつもりなのだから、世間体を気にするほどのことでもない。
今のところふたりの逢瀬は、ウィルフレッドが一方的に会いに来てくれることでしか成立しないというのが、ウェンディには不満だった。