王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
「だから俺はこの世界にいるわけじゃないけど、きみは全くの孤立無援でもないってことさ! それに、なぜかムキになってきみを迎えに行きたがっていたきい……」
「エリー!」
ぺちゃくちゃとしゃべるカラスを遮って、遠くからエリナを呼ぶ声がした。
エリナはハッとして立ち上がり、よく通る明るい声のする方を振り返る。
この世界で弥生以外の存在を感じるのはこれがはじめてだったが、その声は聞き慣れたもので、頭の中にすぐに声の主の顔が浮かぶ。
「おっとヤバい! 俺があんまり介入しすぎると物語が不自然な方向に進むんだ、なんせ神様だからね」
「あっ、待って!」
弥生は他の人物の目に晒されるのを避けたいらしく、地面から勢い良く飛び上がった。
そして比較的低い木の枝を選びそこに止まると、慌てて木の下へ駆けつけ不安な表情で見上げて来るエリナに、抑えた声で強く囁きかける。
「"禁断の青い果実"をもう一度口にすれば、この世界から抜け出せるように設定した。きみにも詳細はすぐにわかる」
「でっ、でも……!」