王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
こんなイケメンの主に向かってそんな口をきいていいのかと焦ったエリナだったが、ウィルフレッドはエリナのからかいを特に気にする様子もない。
「ほんとに、エリーを前にすると自信なくすよ」
そう言って笑うウィルフレッドの無邪気な表情は、それがずっと前から続くふたりの関係なのだと感じさせた。
(大丈夫、わたしはこの世界でもわたしのままだ……)
エリナは瑛莉菜ではなくなっていたが、思ったことをするのも言うのも、彼女自身の意志には変わりないのだ。
そのことは、この世界で目覚めたときからエリナの中に巣食う不安を随分と軽くさせた。
「エリーが結婚しないことを心配に思う人もいるみたいだけど、俺はエリーが本当に好きになった男じゃなきゃ、結婚は認めないよ」
「はい」
優しく光る琥珀色の瞳に、エリナは小さく頷いた。
確かに、この世界でエリナの歳になっても独身の女性というのは十分に行き遅れの部類だ。
それでもウィルフレッドがエリナに"本当の恋"を望んでくれることを、不思議と素直に嬉しく思った。