王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~

「そこで、なんだけど。明日の王宮舞踏会に一緒に来てほしいんだ」

「ぶ、舞踏会に? で、でも……」


予想外の提案にエリナの空色の瞳はぱちぱちと瞬き、ウィルフレッドの薄い唇は孤を描いて笑った。


「俺が他のふたつの家に好かれてはいないこと、わかるだろ? ひとりじゃ心細いんだよ」


"心細い"と言いながらもウィルフレッドの表情はかなり楽しんでいて、こう言えばエリナが断れないことを知っているのだ。

一見頑固で強がりなところのあるエリナだが、意外と押しに弱く頼まれると断れないのは彼女の欠点であり、いいところでもあった。


ウィルフレッドの言う"他のふたつの家"とは、禁断の青い果実の3つの材料のうち、はちみつとラズベリーをもつ家のことだ。


はちみつはウェンディのいるコールリッジ伯爵家にあり、ラズベリーはヴェッカーズという伯爵家にある。

そしてウィルフレッドの本邸には、青い薔薇が咲き誇るバラ園があるのだ。


300年前、そのブルーローズを国王から与えられたのは3人の兄弟のうちの長男であった。
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