王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
「仕方ないですよ。ウィルフレッドさまはまだ伯爵令嬢に会ったこともないんですから」
しかも、コールリッジ伯爵との仲は良好とは言い難い。
突然国と王子の命運を背負わされた今の状況で、十分気丈にふるまっている方だと思うのだ。
その上ウェンディへの気遣いを見せろだなんて、ちょっと酷だ。
「自然な展開だと思いますよ」
「そういうところが気に食わないんだよ! もう俺の宇野ちゃんを味方にしやがって」
ウィルフレッドは弥生の小説の登場人物なのだから、ウィルフレッドのフォローをすることはつまり、弥生のフォローになるはず。
それなのに弥生はイライラしたように尻尾を小刻みに揺らし、拗ねてエリナの指をがぶがぶと甘噛みする。
痛くはないが、少しくすぐったい。
「紳士的でモテて、身分も容姿も性格も揃ったイイ男なんて。乙女が求めるヒーロー像ってのは贅沢なんだよ、そんな奴いるわけないだろ!」
いきなり書かなければいけない状況に追い詰められて、弥生は弥生でストレスが溜まっているらしい。