王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
エリナはバルコニーの手すりに頬杖をつきながら、瞬く星の数を何ともなしに数える。
明日は王宮舞踏会だ。
きっとそこから、物語も動き出すに違いない。
「やっぱり俺、ウィルフレッドって苦手だよ。動かしにくいし、なんとなく鼻につくし」
突然近くで声がして驚いて振り向けば、なぜかエリナの部屋の中から真っ白い猫がとことこと歩み出てきた。
すらりと細身の美しい白猫は、ぴょんと跳び上がって手すりに上る。
「いくら政略結婚が当たり前だからって、あれじゃウェンディがかわいそうだ」
白猫が口を開くと聞き覚えのある声でしゃべるので、どうやらこの猫はただの猫ではないらしい。
昼間のカラス同様、"神様の遣い"だ。
「だからって暗殺はナシですよ、やよいせんせー」
エリナがそう言いながら華奢な指で喉元をくすぐってやると、猫の姿をした弥生はゴロゴロと嬉しそうに喉を鳴らした。
姿はまるっきり違っても、弥生と話ができることに自然とエリナの肩から力が抜ける。