神様修行はじめます! 其の四

ふと気付くと、風に乗って小さな泣き声が聞こえてくる。


・・・誰が泣いているんだろう?


声の主を探すあたしの視線の先に、砂浜に横たわる信子長老の遺体が見えた。


そのすぐそばには、どうやら命を取りとめたらしい絹糸がチョコンと座り込んでいる。


そして浄火もすっかり回復した様子で立っていた。


ふたりが沈痛な表情で見下ろしているのは、信子長老と。


その変わり果てた遺体にすがりつき、泣き崩れているひとりの少女の姿だった。


その少女が誰なのか分かって、あたしは驚愕する。


「子独楽ちゃん!?」


そんなバカなと思いながら、目をこすった。


でも間違いない! あれは確かに子独楽ちゃんだ! なんで!?


あたしは門川君を勢いよく振り返った。


「ど、どうして!?」


「浄火君と同じだよ。彼女も大量に出血したから、異形が体から出て行ったんだ」


「じゃあ、浄火も子独楽ちゃんも普通の体に戻ったの!? ていうか、なんで子独楽ちゃん生きてるの!?」


「僕が回復させたからだよ。当然だろう」


事もなげに言う門川君を、あたしは当惑して見つめた。


僕が回復させたって・・・。


だってあなた、絹糸と浄火ふたり分の回復で限界だったでしょ?


「どこにそんな余裕があったの?」


「ないよ。そんな余裕は。だから後回しにしたんだ」


「・・・後回し?」


「彼女と君の体を仮死状態に保ったんだ」


そう言われたあたしは、思い出した。


そういえば門川君に思いっきり罵倒されまくってた時、彼の体から冷気を感じたっけ。


異形を攻撃しようとしているんだと思ったけど。


そうじゃなくて、最初からそれが目的だったのか。


そういやあたしが意識を失う寸前にも、自分の体が急激に冷えるのを感じた。

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