神様修行はじめます! 其の四

そうして冷凍スリープ状態みたいにして、彼は後からあたし達を回復してくれた。


なんかもう、それってSF小説の世界だ。


実際にやろうとしたら体温とか、タイミングとか、信じられないほど繊細な調整が必要なんだろう。


それを、やったわけかこの人は。


しかもあの状況で。


「はぁ・・・」


「どうした? まだ体調が優れないのか?」


「・・・ううん。助けてくれてありがとう」


「他に方法がなかったからな。イチかバチかだったが、やるしかなかった」


やるしかないからやっちゃって、しかも立派に成功させたわけね?


さっきあたしのこと、成長してるって言ってくれたけど。


この人、自分も異様に能力アップしてることに気が付いていないんだろな。


アップっていうより、もうメタモルフォーゼの域に達しているけど。


ある日突然、彼って未知の変異体に変身してそう。


それが怖い。本気でありそうで。


門川君に助け起こされ、あたしは立ち上がった。


眩暈も吐き気も完全に治まっていて、不調はどこも感じない。


皮膚の色も元通り。あのミドリムシ君は完全撤去されたらしい。


さすがは門川君だ。


すっかり回復したあたしは、彼の後についてみんなの元へと近付いた。


そして、横たわる信子長老を黙って見おろす。


物言わぬ姿となった彼女は、青白く透き通るような色をしていた。


彼女も、大量に血液を失っていたから。


亡くなる時、ひょっとしたら普通の体に戻っていたのかもしれない。


そう思ったら・・・ほんの少しだけ、慰められるような気がした。

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