神様修行はじめます! 其の四
すっかり頭に血がのぼったあたしは、我を忘れて叫んだ。
「どこ!? 出てこい!」
どこまであたしの心の平穏を踏みにじれば気が済むの!?
あんたって、サド!? この変態ババめ!
「もう許さない! 隠れてないで出てこい!」
「信子ババなら、ここにはいねえぞ? 用があるって帰った」
「用!? なんのよ!?」
「知らねえよ。オレは信子ババの従者じゃねえし」
袴の土をパンパンと払いながら、浄火は立ち上がった。
そしてポカンと突っ立っているお岩さんに向かい、ニカッと笑いかける。
「あんたが権田原の当主か?」
「・・・ええ」
「ここの牛もニワトリも、よく世話されてるな。立派なもんだ」
「・・・どうも」
「オレは浄火だ。しばらく嫁の里緒と一緒に厄介になるぜ。よろしくな!」
よろしくな!・・・じゃない!
しかも、嫁って言うな嫁って!
せっかくあんたを避けるために、わざわざここに来たってのに!
「あたしはあんたと共同生活なんか、絶対にごめんだからね!」
怒鳴りながら睨みつける。
やっと我に返ったお岩さんが、加勢するようにあたしと浄火の間に立ち塞がった。
「申し訳ありませんけど、わたくし、体調がすぐれませんの。お引き取り願いますわ」