泣きたい夜には…~Hitomi~



慎吾と付き合うようになってまだ日が浅いけれど、こういうことは以前にもあった。


今夜なんてまだいい方。


酷い時は行為の真っ最中に呼ばれたこともある。


それでも慎吾は私の気持ちを汲み取ってくれて、


「行って来い!子供の命を救うことがお前の仕事だろ?」


笑顔で気持ち良く送り出してくれる。


申し訳ない気持ちでいっぱいになるけれど、


そんな慎吾の気持ちがありがたくて、


嬉しくて……


ますます慎吾が好きになる。


大好きでたまらない私の自慢の彼。


全身で慎吾を感じ、愛し愛されたい。


慎吾で満たしたい。


私の中で慎吾という存在が色濃く大きくなっていく。


完全に私、慎吾中毒ね…。


ガチャ!


部屋の鍵を開ける。


室内の静けさは寂しさを誘う。


ついこの間まではそんなこと思ったりしなかったのに。


「あ……」


玄関の三和土にある慎吾の靴に、思わず胸が熱くなる。



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