泣きたい夜には…~Hitomi~



玄関の三和土にある慎吾の靴に、思わず胸が熱くなる。


待っていてくれたんだ。


嬉しくて走りたい衝動に駆られるも、眠っている慎吾を起こしてしまうのは忍びなくて……


音を立てないようにそーっとベッドルームに入る。


眠っている慎吾の顔を覗き込み、


「ただいま……もう寝ちゃた?」


そっと囁いてみる。


突然腕を掴まれ引き寄せられ、


「きゃっ!」


慎吾の腕の中にすっぽり納まった


「お帰り、早かったじゃん!」


笑顔の慎吾は寝ずに待っていてくれた。


そう思ったらとても嬉しくて頬が緩んでしまう。


「よくわからないんだけど、私が心肺蘇生代わった途端に心拍再開したの。最近、そういうことが多くて、病棟では『浅倉マジック』なんて陰で言ってるみたいなの。だからといって、あんまり呼び出されるのもね、邪魔されたくないし」


仕事は大事、


だけど、慎吾との時間も大切にしたい。



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