泣きたい夜には…~Hitomi~



「とにかく診せてくれる?」


痛がる慎吾の顔を覗き込むと、


「お前、ずいぶん大胆だな」


え……


「何で?……ッ!うゎっ!!!!」


よく見ると、意地悪な笑みを浮かべる慎吾の上に私が馬乗りに……。


「ご、ごめん!」


慌てて飛びのこうとすると、慎吾が私の腕を掴み、視界が反転した。


あれ?


何で、天井が見えるの?


状況が読めずに戸惑う私と天井の間に割り込むように慎吾の顔が入ってくる。


「今は食欲の秋の気分でもある。このままひとみを堪能させてもらうよ」


慎吾の艶やかな笑みに、ドクンッ!と心臓が大きく跳ねた。


深まる秋


ふたりの仲もますます深まって……


また何か起きるなんて思いもしなかった。


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