泣きたい夜には…~Hitomi~



ベッド数800床の桂川総合病院。


14階建ての病院内は目を瞑っていても院長室まで行かれる自信がある。


エレベーターで最上階まで一気に上がり、歩くピッチを上げる。


少し前を男性が歩いている。


細身で長身、センス良くスーツを着こなすさまはいかにもデキる男という感じだ。


彼なのか……?


お父さんの選んだ花婿候補は。


だとしたら先にお父さんのところに行かないと……


さらにピッチを上げようとしても医療用サンダルを履きなれた私にはヒールの高いパンプスは歩きにくい。


お母さん、謀ったわね。


彼との距離は詰めたものの、


「失礼します」


タッチの差で男性の方が先に院長室に入ってしまった。


でも、まだ戦いは始まっていない。


男性に続くように院長室に入り、その後ろで足を止めた。



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