泣きたい夜には…~Hitomi~



だって、そこにいたのは慎吾だけではなかったから。


慎吾の隣にいたのは私なんか足元にも及ばないくらい大人で綺麗な女性。


親しげに話すふたりを見ているうちに、


ズキンッ!


胸が痛くなってきた。


美人だからって鼻の下伸ばしちゃって…


許せない!


ふつふつと湧き上がる苛立ち、やがてそれは怒りへと変わっていく。


しばらく慎吾と女性は話をしていたけれど、高級車に乗ったセレブ風な若い男性と駐車場を後にした。


車が見えなくなっても呆然と立ち尽くす慎吾。


情けない男ね!!!!


慎吾に背後から近付いて、


「あーあ、振られちゃったわね!」


嫌味たっぷりに声をかけると、慎吾の肩がビクッと震え、こちらを見た。


「ひとみ!」


慎吾は私を見て、目を見開いた。



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