フェイント王子たち
「あ、ありがとうございます」
昭次さんはニッコリ笑うとカウンターの中に入って行く。
「今日は、顔色が良さそうだね」
と、言いながら、マスターがお手拭きを渡してくれる。
「はい、お蔭様で。去年はご迷惑をおかけしました」
「だから、迷惑じゃないって」
「そういえば、去年、なんかあったんですか?」
マスターの隣に昭次さんが寄って来て、真っ直ぐ私を見つめる。うっ、マスター、昭次さんに言ってないんだ。