フェイント王子たち

「うるさいな、お前は。働け、働け。」

マスターは犬にやるみたいに左手で軽く『しっしっ』と追いやろうとする。

「はい、はい」

低い声で返事をすると、仕方なく、昭次さんはカウンターの向こうのお客さんの方に移動して行く。

「昭次さんに言ってなかったんですね、康二と別れた事」

「お客様のプライバシー保護の為にね」

って、マスターは軽くウインク。う〜ん、ウインクがこんなにさりげなく出来る40代を私は他に知らない。

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