フェイント王子たち

やっぱり、姉ちゃんの分も奢らせたのは、心がちょっとだけ痛むから、ちゃんと言っとこ。
川合を追って店を出る。

「ありがとね」

「この貸しはいつか返してもらうからな」

「返せる時なんてあるかなぁ。次に会うのは何年後になるかわかんないよ」

「それでも、返してもらうさ」

「うわっ。なんか、利子とか付けられて、高くつきそ」

「おう、それいいな」

「うわ〜、冗談に聞こえない」

「ははっ。おっと、そろそろ行かなきゃ。じゃあ、またな」

「またね〜」

川合は軽く手を挙げて、映画館の方に消えていった。

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