ツンデレくんに出会いました。
駿哉と居酒屋に来た。二度目。

「今日は飲むなよ」
「わかってます」

釘を刺されたので、あたしはウーロン茶とジュースを交互に飲んでいる。

「あ、そうだ。こないだネットで駿哉の名前検索したの。特許取得の記事出てきた」

あたしの言葉に、駿哉があからさまに顔をしかめた。

「ストーカー?」
「できればそうでないことを祈りたい」
「否定しろや」
「あの、本当に、なんとなくで検索しただけ。それ以上でもそれ以下でもないよ」

わざとらしくため息をつかれて焦る。

「本当にごめん。あの、駿哉ってすごい人なんだなって思って、思わず」
「別にすごくないし」
「いや、特許取得って、普通の人しないから」
「仕事の一貫やから、すごいことしとるなんて思っとらん」

全然そんなことない。院卒で、研究職で、あたしとは全然違う世界にいる人。
なんだか駿哉がすごく遠く感じる。
その後ぽつぽつと会話して、2時間もしないうちに、居酒屋を出た。
なんとなくいたたまれない気持ちで中出の後ろを歩いた。
ご飯を食べるって約束だったから、それだけだったから。
このまま歩けば駅に着いて駿哉と別れる。

「あの、駿哉、あたし」

駿哉が振り返った途端、甘い匂いがした。
駿哉はいつも甘い匂いを纏っていた。
でも今嗅いだのは駿哉の匂いではない、もっと砂糖菓子みたいな甘ったるい匂い。
化粧品に疎いあたしでも、香水だとわかる。

「…駿哉、香水なんてつけてたっけ」
「つけとらん」

駿哉がつけてないなら、なんて、考えたくもない。
胸の奥がざわざわしていたら、「拾い食いすんなよ」と真顔で言われた。

「しませんが」
「酔ってるやろ」
「駿哉に言われたから、一口も飲んでないよ」
「そうけ。おやすみ」

駿哉が背を向けて歩き出して、あたしはぼんやりと眺めるしかなかった。
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