ツンデレくんに出会いました。
「奈子も、他の男知っといた方がいいんやないの」

ガーンと頭が殴られたと思うほどの衝撃。
余計なお世話だと言い返したかった。
でも喉が詰まって、声が出ない。
駿哉があたしの手を取った。
近づいた顔が、耳元に影を落とす。

「それとも、俺が相手になる?」

駿哉があたしの手の甲に指を滑らせる。
至近距離の声が脳内で響く。
顔に熱が集まる。
その声で、指で、他の女を翻弄したのか。
その人の香水が移るくらい。
きっと、あたしがまだ自分を好きなことを知っていて煽っている。
腕を振って、駿哉の手を振り払った。

「…大丈夫、です」

足早にその場を去った。
走る勢いで駅まで向かう。
昔なら絶対言い返していた。「ふざけんな!」くらいは言っていた。
でももう、憎まれ口の一つも叩けなくなった。
ならばせめて、誘いに乗ってしまえばよかったのか。
わからない。何一つ正解がわからない。
頬に伝うのが汗か涙かわからなかった。
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