恋をしようよ、愛し合おうぜ!
野田さんの一番上のお兄さんの和人(かずと)さんには、元旦会えなかった。
お礼も言いたかったし、会いたかったなぁと思っていたら、おんぼろアパートを完全に引き払った1月半ばに、野田さんち(というか、今は私んちでもある)に遊びに来てくれた。
しかも、和人兄さんの彼女、聖(ひじり)さんも一緒に!

和人兄さんは、野田さんと外見は似てるけど、野田さんよりも背が低く、よりガッシリした体型をしている。
目つきが鋭いせいか、睨まれると怖いだろうなぁって感じもした。
でも聖さんを見る目はすごく優しいし、聖さんのことを、時々「ひーちゃん」と呼んでた声は、ちょっと甘えモード入ってたし!

聖さんは、私よりも10以上年上の女性だけど、「可愛らしい」という言葉が似合う女性だ。
ただ、聖さんには悪いし、失礼かもしれないけど、もう少し自分自身をケアしてあげたら、もっともっと可愛らしさが引き立つのにと、そのとき思った。

だからそれから数日後、「2月14日のバレンタインデーに、変身のお手伝いをしてほしい」と聖さんから電話で頼まれたときは、二つ返事で引き受けた。

「14日は午前中から聖さんと会う」と、野田さんには言ってたけど、聖さんがオシャレに変身するという内容は、ずーっと内緒にしていた。
野田さんは口が重いタイプだけど、こういうのは実際見るまで知らない方が、ビックリ度も増すと思うし。

というわけで、バレンタインデーに二人であれこれお出かけした結果、和人兄さん、絶対惚れ直す!ってくらい、聖さんは変わった。

でも実際のところ、外見的にはそんなに変わってない。
変わったのは聖さんの心の在り方というか、持ちようというか、とにかく内面の方が劇的に変わったと私は思う。
外見の変化は、自分に自信を持つきっかけにすぎない。

自分に自信を持つこと、自分を構うこと、慈しむことは、私がセミナーでもお話している「ビューティーライフ」の心がまえでもある。
これを機に、聖さんもこのときの気持ちを忘れないで、相手だけじゃなく、自分に対しても、愛情をこめて接してほしいと思った。


この日、聖さんと一緒に、お友だちのおうちで作ったフォンダンショコラを、野田さんにプレゼントした。
チョコだけっていうのは嫌いな野田さんだけど、私が作ったフォンダンショコラは「めっちゃうめぇ!」を連呼して、ペロっと完食してくれた。


翌々日の16日。
野田さんから帰るコールがあったとき、野田さん一人で帰ってくると確認した私は、イソイソとクローゼットに行き、野田さんのワイシャツを借りた。


「ただい・・・ま」
「おかえり、あ・な・た」

と言った私は、おニューの赤いリップグロスを塗った唇をセクシーに上向かせると、体を少々横の壁に寄りかからせた。
そうして野田氏のワイシャツを着て出迎えた私を、野田さんはたれ気味の目をまん丸にして見ている。

長い袖は手首が見えるくらい曲げて、胸元のボタンは3つほど開けてみた。
おかげで胸の谷間も見えちゃってるはず・・・ううん、赤いブラまでチラ見えてるかも。
しかも今は、壁につけてる右手をちょっと手を上げているから、赤いパンティだって見えてるんじゃないかなーって丈で。

「・・・彼のワイシャツ着て“おかえりー”っていうの、一度でいいからしてみたかったの。裸エプロンも候補にあったんだけど、今の時期だと寒いでしょ?」

と、上目づかいで可愛く私が言っても、野田さんは無言のまま、そしてドアノブに手にかけたまま、その場に突っ立ってた。
だけど私の声でハッと我に返ったのか、慌ててドアを閉めた。
そして乱暴に靴を脱ぎ終えると、私を抱きかかえて、寝室へ直行してくれた。

「・・・だからさっき俺一人かって聞いたのか」
「うん。一応ね、1週間前から計画し始めて、ワイシャツにアイロンかけて。・・・インパクトあった?」
「すっげーありすぎて、鼻血出るかと思った」

と言ってくれた野田氏のは、すでに準備万端で・・・。

「だから俺、なっちゃんのこと大好きなんだよ。てか俺、もっとおまえに好きって分からせないといけねえよな」

結局晩ごはんを食べたのは、それから2時間後になった。
・・・こうなることを想定して、後で温めなおせるおかずを作った私です・・・。


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