不機嫌なアルバトロス
「やめるって…あとはほとんど残ってないじゃんよー」
益々呆れたというように、憲子が頬杖をつきつつ、笑う。
「まぁ、狙った人をそのくらい落としたあんたも、すごいけどねぇ。」
そうじゃないのよ。
パソコンの画面と向き合って、憲子には何も答えずに心の中で呟く。
狙った人だってね、本当に真の男のような人間だったら私になんか食いつかない。
この会社の中に、それだけの男が居なかったってだけ。
私はそう思ってる。
でも―
メールチェックしながら、ふと思う。
私はいつも手近な所で選んでいるように思う。
手が届かなさそうな人は、自分からラインを引いていた。
今朝の、あの人みたいに。
きっと、もっと似合う誰かがいるだろうって。
クスリと自嘲の笑いが漏れた。
「げ。何笑ってんのよ、気持ち悪」
隣で退いている憲子に知らん顔して、痛い事実を認識する。
いつの間にか自分は、運命の人から一番遠い所にやってきてしまったらしい―
理想の王子様とは、釣り合いの取れない、落ちぶれた女に。