不機嫌なアルバトロス
家に帰り、部屋の電気を付けて、エアコンを入れる。
泣くな泣くなと思いながらも、結局泣き過ぎて、顔はぐしゃぐしゃだ。
思い出すと、涙が止まらないから。
思い出すのは避けているんだけど。
じわじわと勝手に思い描かれてしまって。
すごい好きなんだと思い知らされる。
「引きこもりになりそう…」
コートをハンガーにかけ呟く。
冷たい水で絞ったタオルを目に当てて、椅子に座った。
『さよなら』
耳に残る声と笑顔が、目を閉じると浮かんでしまう。
枯れた涙は幾らでも湧いてくる。
「はぁー」
大きな溜め息と一緒にテーブルに突っ伏すと軽い音を立てて、何かが床に落ちた。
「あ。」
足元に落ちている黒い小さい物体には、見覚えがあった。
かなり、忘れてたけど。
私はそれを拾い上げると、まじまじと見つめた。
―事の発端、とでも言うべきか。
別れ際に、中堀さんのくれたメモリーカード。
テーブルの上に置きっ放しにしていたらしい。
『よく映ってた』なんて言っちゃって。
ホント、意地悪な人。
最低な人。
だけど、憎めない人。
「もう、要らないか」
一人言(ご)ちて、そのままゴミ箱に投げ捨てた。
同じように、自分のこの気持ちも記憶も、一緒い捨てれたらいいのにな、と思いながら。